今現在、ハウスメーカー等で建てる住宅は「高気密・高断熱」をうたっている住宅が多いですが、土壁は気密性という点では不向きな壁材のため、「高気密・高断熱」を特徴とした住宅に使う壁材としては適していません。
ですが、それは土壁が壁紙と石膏ボードに劣っているという事ではありません。
「高気密・高断熱」の住宅と、土壁でできた住宅では考え方が根本から違います。ハウスメーカーの住宅が「高気密・高断熱」を特徴とするなら、土壁には「通気・調湿・調温」という大きな特徴があります。
そんな知っているようで知られていない土壁のメリットとデメリットを皆さんに知ってもらいたいと思います。
土壁は基本的に土、竹、わらなど自然にあるものを素材に使っているので、ホルムアルデヒドが発生しません。また、他素材から発生した化学物質を吸着してくれる効果もあるため、化学物質の悪影響を激減することができます。
土壁には目には見えない細かい気泡があり、外の空気と住宅の中の空気を自然に入れ替えてくれます。空気が循環しやすいため、蒸し暑さや、じめじめした空気を緩和し、快適な空間にしてくれます。
そのため、ハウスメーカーが建てる住宅では必ず施工しなければならない強制換気が不要になります。
また、ハウスメーカーの住宅は高気密のため、暑い、寒い、じめじめするといった場合の対処法として、エアコンを使ったり、換気をしたり、除湿器や加湿器を使用する必要が出てきますが、そういった手間もコストもかかりません。
住宅は買って終わりではありません。
ハウスメーカーで建てた住宅の場合、外壁の材料としては主にサイディングを使用することが多いです。
サイディングは土壁よりもお値打ちに仕上げることが可能ですが、長期的に見ると必ずしもそうとは言い切れない部分があります。
サイディングはメンテナンスとして、サイディングの間の目地にシーリングを充填するのですが、シーリングの劣化はサイディングより早く、10年程度で再塗装をする方がいいとされています。そのため、大きさにもよりますが10年毎に100万円~200万円ほどの費用がどうしても発生します。
しかし、土壁の場合はきちんとした施工がしてあれば大きなメンテナンスは基本的に必要ありません。サイディングと比べると最初の施工費が高くついてしまいますが、特にトラブルのない場合はメンテナンスが不要なので、余分な出費を抑えることができます。
塗り壁は壁の一つ一つが職人の手仕事で仕上げられるため、デザインのバリエーションが非常に豊富です。同じ素材でも塗り方一つ違うだけで大きく変わります。
またインテリアの照明などを使うと、壁紙の平坦な仕上げではできない光の陰影ができ、趣ある仕上がりになります。
壁紙と違って、土壁や漆喰は塗って終わりではありません。塗った直後は柔らかく、壁がある程度乾いて固くならないと次の工程に進めません。
また、扇風機などで無理やり乾かすとヒビが入りやすくなってしまうため、基本的には自然乾燥をしていく必要があります。そのため、ハウスメーカーの住宅と比べると、工期が1~2倍程度長くなります。
施工法にもよるので、一概には言えませんが、竹で下地を組んでそこから塗った土壁には画鋲は刺さりません。刺さらないだけじゃなく、ボロボロと欠けてしまいます。
どうしても使用したい場合は柱に対して使用するか、そこだけ画鋲が刺さるように違う材料を使うなど、対策が必要になります。
職人の腕の影響で差が出てくる部分でもあるのですが、壁の角には年月を経ると必ずヒビが入ります。どれだけ頑丈に作ったとしてもです。
大きな車が通れば人が体感しないレベルでも振動しています。その結果、壁の角のヒビは回避できない部分になります。
ただし、土壁にヒビが入っても、住宅そのものに悪影響はなく、基本的にメンテナンスも不要です。 壁紙ですと、傷んだ場合はその面をすべて張り替る必要があります。
土壁の大きな特徴をまとめると、初期投資はかかりますが、長い目で見ると必ずしも高いわけではありません。むしろ長い目で見ればメンテナンスの費用や電気代などが抑えやすいです。
また、ホルムアルデヒドなどの有害物質を抑えることができるので、眼に見えにくいですが、健康や快適さなども踏まえて考えればコストパフォーマンスは実はとても高いのが土壁の住宅の特徴です。